上級司書と正会員
日本の図書館業界で、「日本図書館協会専門職員認定制度」(通称「上級司書」認定)なるものが行われようとしています。ぼくの仕事には直接関係のない制度で、正直なところ、興味も関心も持っていませんでした。しかし、きのうの日記を書いていて、この「上級司書」認定は職能団体(ここでは日本図書館協会)の運営において、意外に大きな意味のあるものにできるかもしれないと思いました。つまり、こういう妄想戦略です。ほとんどALAの個人会員制度そのままですが。
- 全ての個人会員は、雇用形態や勤続年数にかかわらず、同一の権限や特典を与えられる
- 「上級司書」認定を受けている個人会員は「正会員」になることができる
- 「上級司書」認定を受けていない個人会員については、"Library Support Staff Membership"相当の会費の割引を行う
- 非常勤や求職中の個人会員については、"Non-Salaried Membership"相当の会費の割引を行う
- 「正会員」にあたる個人会員については、会費を値上げする
つまり、「正会員」の実質的なメリットは何もありません。強いて言えば「(厳しい要件を満たした)正会員である」という一種の名誉がありますが、それだけです。
「値上げされるだけなのに、わざわざ上級司書や正会員になろうとする酔狂な奴はいるのか?」という疑問は出てくるでしょう。ただ、最初に「これは」と思う何人かにお願いして上級司書や正会員になってもらって、
- あこがれのあの人が正会員に! 私もなろう!
- あの程度の奴でも正会員になってるのか? 俺もならないと「あいつ以下」と思われてしまう
という状況につなげることができれば、「上級司書」認定の申請者も増えて、うまく回っていくのではないかと思います。醜いといえば醜い話ですが、「自分は正会員(上級司書)だ」というプライドに価値を見いだすことができる人は、少々高い会費でも喜んで払ってくれるはずです。もちろん、そんなものがどうでもよければ、"Library Support Staff Membership"相当の値下げされた会費を払えばよいことになります。
…と、ここまで書いて専門職員認定制度のページをもう一度見ていたら、
少なくとも司書資格を取得された機関が発行した司書資格証明書の提出と日本図書館協会会員であることが必要となります。
http://www.jla.or.jp/nintei/yobi_top.html
という記述がありました。つまり、「上級司書」を名乗りたければ会員になれ、というわけですね。商売としては悪くありません。
でも、これは「上級司書に認定された人は正会員として迎えます」のようにしたほうがいいのではないでしょうか。非常勤を中心に「入会する余裕がない」という方が多いのですから*1、間口を広げて非会員でも申請を行えるようにしたほうが申請者と申請料を集めやすいと思いますし、そもそも会員であることと「上級司書」の能力を持っていることには、直接の関係はないはずです。
*1:この場合、認定された方が入会する際でも「正会員」を申請せず、割引価格の会費を払えばよいのです。
円高だし日本図書館協会じゃなくてALAに入会しようぜ
「アメリカではこうなのに日本では…」というありがちで安易な話、かつ日本図書館協会もAmerican Library Associationも入会していない非会員の意見で申し訳ないのですが*1、日本図書館協会で非常勤職員や求職中の司書向けの会費を設定することはできないのでしょうか。最近図書館の方と話していて、「活動に興味はあるけど、いかんせん会費が高すぎる」という話を何度か聞いたことがありますので、もし上手に宣伝すれば、非常勤であることが多い若手の図書館員に対する需要を掘り起こすことができ、活動の活性化につながるのではないかと思います。ALAには年収25000ドル以下の人のために"Non-Salaried Membership"という会員区分があって、会費は正会員の会費*2から3割〜6割引、権限は正会員と同等とのことです。
ところでこの円高のご時世、日図協の個人会員の会費(9000円)とALAの正会員(Regular Member)の2年目の会費(98ドル)がほぼ同額なんですね。ALAの正会員になるには修士号や州からの認定などが要求されるので敷居が高そうですが、アメリカ国外の図書館関係者向けに"International Membership"という割安な会員区分があるので、もし日本から入会するならこれを選ぶことになると思います。実のところ「職能団体なんてどこも似たようなもんじゃないの?」と思わなくもないのですが、少なくとも日図協ではできなさそうなことをしているのは確かなようです。
*1:実は日図協は学生会員だったことがありますし、ALAもSmart Libraries Newsletterを自前で購読していたことがあります。
*2:正会員の1年目と2年目の会費は割引価格で、それぞれ65ドル、98ドルとなっています。3年目以降が130ドル。
蒲田図書館のTwitter
Project Next-L "Enju"のデモ用に作っていた蒲田図書館のTwitterアカウントに、いつの間にか多くのfollowがついていた。よく見るとALA TechSourceからもfollowされている。
去年の12月で止まっているのは、
- 開発作業のため、一日1回自動的にテストデータを読み込んでテストをしているのだが、その際にテストデータをTwitterに投稿してしまっていた
- ネットワークの不調でTwitterに接続できなかったときの処理を作っていない
- そもそも「図書館でもこんなことができるよ」というデモ用に適当に作ったものだし
という理由でいったん投稿機能を止めていたからなのだけど、これだけfollowがついているんだったらまじめに作るよ。
will_paginateのAjax対応
Railsプラグイン will_paginate でのAjaxによるページ送りの方法について、「ブログで見かける"RemoteLinkRenderer"みたいな link_to_remote ヘルパーによる方法は、検索エンジンのロボットに悪影響があるから使うな」と開発元のWikiに書いてある。推奨される方法も同じページにある。
たしかに、"RemoteLinkRenderer"を使う方法だと各ページへのリンクにページ番号が含まれない(「a href="#"」)が、開発元の方法だとページ番号がちゃんと含まれる(「a href="/manifestations?page=2"」)。
Project Next-L 参加館総合目録構想
「Project Next-L 参加館総合目録」を作りはじめました。以下、16日にNext-L のメーリングリストに流したのと同じ内容ですが、改めてここでも書きます。
昨年いろいろなところでProject Next-Lのお話をさせていただいたのですが、そこでよく要望される機能として「複数館の横断検索」がありました。
現在のProject Next-Lのシステムは分館対応にはなっていますが、ひとつのサーバーで管理できるのはひとつの組織の図書館だけで、組織(サーバー)をまたいだ蔵書管理や検索はできません。つまり、ひとつのサーバーで「A市立図書館」と「B市立図書館」の両方の管理はできないという意味です。
横断検索に使う「総合目録」といえば、すでにNACSIS-CATやゆにかねっとなどがあり、本来はそちらを充実させるのが筋だと思っています。しかし、現状はいずれもそのあたりの小さな図書館が気軽に参加してデータを追加できるものではありませんし、そのような状況をすぐに変えるのは難しそうです。それに、せっかくのプロジェクトですから、「総合目録」の新しい姿も考えてみたいです。
そこで、それらの要望に応えるために、Project Next-Lのシステムのための横断検索用総合目録サーバーを作ることにしました。とりあえず「Project Next-L 参加館総合目録」という名前をつけておきます。URLは仮のもので、変更される場合があります。
Project Next-Lのシステムを利用している図書館で資料の受け入れを行ったとき、つまりFRBRでいえばItemが作成されたとき、システムはこの総合目録サーバーに以下の情報をHTTPで送信します。
- 資料のタイトル、著者名、出版社名
- ISBN
- その資料の所蔵館におけるManifestationのURL
- 所蔵館のURL
総合目録サーバーはこれらの情報を受け取り、同じISBNの資料があれば所蔵館の情報だけを、なければ資料の情報と所蔵館の情報を登録します。もし所蔵館の情報が登録されていなかったら、送信元の図書館にアクセスして、館名や住所などの情報を取得します。これらの情報のやりとりはRESTで行われます。
登録された書誌情報は、すぐに検索できるようになります。各資料の表示方法については、myrmecoleonさんの「所蔵図書館マップ」を真似ています。
以上がメーリングリストに流したものです。このメールを送った直後に、日外アソシエーツの「公共図書館OPAC総合目録データベース」という計画があるのを知りました。 なお、去年の図書館総合展で「ちょっとした隠し球」として発表する予定だったのはこれでした。